
執筆・監修:菊地 健太(理学療法士)
「赤ちゃんを抱いて立ち上がると膝が痛い」「床から立つ瞬間につらい」「階段、とくに下りが怖い」。産後に、このような膝のお悩みを相談されることがあります。
産後の身体には変化がありますが、膝の痛みをすべて「筋力が落ちたから」「ホルモンで関節が緩んだから」と決めつけることはできません。痛む場所、腫れの有無、困る動作を分けて考える必要があります。
この記事では、膝のお皿周囲に出る膝前面痛の15研究・748人をまとめたレビューを中心に、研究から言えること、日常生活で見直したい動作、医療機関へ相談したいサインをわかりやすく整理します。
まず結論|ここだけ覚えてください
産後の膝痛は、負担を減らす工夫と段階的な運動が役立つ可能性があります。ただし、産後特有の原因や効果を証明した研究ではありません。
低い場所からの立ち座りや抱っこ動作を調整し、膝だけでなく股関節・足首も含めて確認します。急な腫れ、熱感、荷重できない状態は医療機関へ相談してください。
産後の生活で膝へ負担が重なる場面
出産後は、赤ちゃん中心の生活になります。授乳や抱っこだけでなく、床でのオムツ交換、沐浴、ベビーベッドへの上げ下ろしなど、妊娠前とは違う高さで身体を使う場面が増えます。
とくに膝を深く曲げた状態から立つ動作、赤ちゃんを抱いたまま階段を下りる動作、片側へ体重を寄せた抱っこは、膝に負担を感じやすい場面です。睡眠不足や疲労で回復が追いつかないと、同じ動作でもつらく感じることがあります。
ただし、これらは「この動作が必ず膝を傷める」という意味ではありません。日常動作の回数、痛みの出方、休んだ後の変化を確認する手がかりです。
痛む場所によって考え方が変わります
膝は一つの関節ですが、痛む場所はさまざまです。まずは「膝が痛い」でまとめず、指一本で示せるくらい具体的に場所を確認します。
お皿の前・周りが痛い
立ち上がり、しゃがみ、階段で痛む場合は、膝のお皿と太ももの骨の間に負担を感じる膝前面痛のパターンがあります。長く座った後の動き始めに気になる方もいます。
膝の内側・外側が痛い
関節の周囲には靱帯、腱、半月板など複数の組織があります。痛む位置だけで診断はできませんが、ひねったきっかけや引っかかりがある場合は整形外科での確認が必要です。
膝の後ろが張る・腫れる
筋肉の張りだけでなく、関節の腫れが後方に目立つ場合もあります。また産後は血栓症にも注意が必要な時期です。ふくらはぎまで片側だけ急に腫れる場合は、自己判断で揉まず医療機関へ相談します。
膝前面痛15研究・748人のレビュー
2014年の系統的レビューとメタ解析では、膝前面痛に対する運動療法を調べた無作為化比較試験15研究、合計748人がまとめられました。
運動を行わない対照と比べ、運動療法は12週以内の痛みと患者自身が感じる活動制限を改善しました。26週以上の長期では活動制限の改善がみられましたが、痛みの有意差は確認されませんでした。
「動かさない方がよい」と一律に考えるのではなく、状態に合わせて運動する考え方を支える結果です。一方で、どの運動が誰に最適かまでは決められていません。
この研究を産後へそのまま当てはめない
研究の質や運動内容にもばらつきがあります。「産後の膝痛は運動で治る」「筋トレをすればよい」と断定する根拠にはなりません。
産後は回復の時期、授乳、睡眠、育児環境が人によって大きく異なります。帝王切開や会陰部の回復、骨盤周囲の痛みがあると、膝の運動より先に負担を調整した方がよい場合もあります。
痛みの種類を確認せずに、深いスクワットや回数の多いトレーニングを始める必要はありません。できる動作から少しずつ進めます。
今日から見直したい5つのポイント
1.立ち上がる高さを上げる
床から一気に立つより、いったん椅子やソファへ移る、手をつく、片膝立ちを使うなど、膝を深く曲げる回数を減らします。赤ちゃんを安全な場所へ置いてから立つことも大切です。
2.抱っこしたまま深くしゃがまない
床の物を取るときは、赤ちゃんを抱いたまま無理にしゃがまず、家族へ頼む、台の高さを変える、先に物を移すなど環境を整えます。
3.階段は手すりを使う
階段を下りるときは、膝を曲げながら体重を支えます。痛みや不安がある日は手すりを使い、急がず、一段ずつ確かめます。赤ちゃんを抱いているときは転倒予防を優先します。
4.膝だけでなく股関節と足首も動かす
2021年のレビューでは、膝前面痛に対して股関節と膝を組み合わせた運動が、膝だけの運動より痛みに有利な可能性が示されました。ただし、これも産後限定の結果ではありません。
まずは椅子に座って足首を動かす、支えにつかまって浅く立ち座りするなど、安全で痛みが強く残らない範囲から始めます。
5.翌日の反応まで確認する
運動中に少し違和感があっても、すぐ元へ戻る場合があります。一方、終わった後や翌日に痛みが強くなる、腫れる、家事がつらくなる場合は量が多すぎる可能性があります。回数や深さを減らしてください。
完全に休む?動いた方がよい?
転倒や急な腫れがなく、日常動作で少し痛む程度なら、すべての活動を止める必要はありません。痛みを悪化させる動作を一時的に減らし、できる範囲の活動を保つ方法があります。
反対に「痛くても鍛えれば強くなる」と我慢を重ねるのもおすすめできません。痛みの程度だけでなく、腫れ、動作、翌日の反応を一緒に見ます。
医療機関へ相談したいサイン
- 転倒やひねりの後、体重をかけられない
- 膝が急に大きく腫れた、変形している
- 赤く熱をもち、発熱や強い痛みがある
- 膝が完全に伸びない、引っかかって動かない
- 膝が繰り返し崩れ、転びそうになる
- 片脚のふくらはぎが急に腫れる、痛む
- 息苦しさ、胸痛、冷や汗を伴う
- 2〜4週間調整しても改善しない、夜間痛が続く
よくある質問
サポーターを使ってもよいですか?
一時的に安心感が得られる方はいますが、原因を確定したり、すべての膝痛を改善したりするものではありません。きつく締めすぎず、しびれや色の変化が出たら外します。
スクワットはした方がよいですか?
スクワットだけが正解ではありません。痛みの場所、深さ、翌日の反応を見ながら、椅子からの浅い立ち座りなど負担の少ない方法から始めます。
整体では何を確認しますか?
当院では膝の診断や治療は行いません。医療機関での確認が必要なサインを見逃さないようにしながら、立ち座り、抱っこ、階段、股関節・膝・足首の動きを整理します。
まとめ
- 産後は低い場所での立ち座りや抱っこなど、膝を使う回数が増えます
- 膝痛を筋力低下やホルモンだけで説明することはできません
- 膝前面痛15研究・748人では、運動療法で短期の痛みと活動制限が改善しました
- この研究は産後女性限定ではなく、最適な運動方法も決められていません
- 動作の高さ、抱っこ、階段を調整し、翌日の反応まで確認します
- 急な腫れ・熱感・荷重不能・片脚の腫れや息苦しさは医療機関へ相談します
参考文献
- Clijsen R, Fuchs J, Taeymans J. Effectiveness of exercise therapy in treatment of patients with patellofemoral pain syndrome: systematic review and meta-analysis. Phys Ther. 2014;94(12):1697-1708. DOI:10.2522/ptj.20130310. PMID:25082920.
- Manojlović D, Kozinc Ž, Šarabon N. Trunk, Hip and Knee Exercise Programs for Pain Relief, Functional Performance and Muscle Strength in Patellofemoral Pain: Systematic Review and Meta-Analysis. J Pain Res. 2021;14:1431-1449. DOI:10.2147/JPR.S301448. PMID:34079359.
店舗情報
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店舗名
- 女性専門整体院 Life琴似店
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代表
- 菊地 健太(きくち けんた)
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住所
- 〒063-0804
北海道札幌市西区二十四軒4条4丁目13-2
リヴェール琴似1F
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