
執筆・監修:菊地 健太(理学療法士)
更年期の「ほてり」とは
何もしていないのに、胸や首、顔が急に熱くなる。汗が噴き出し、少しすると寒く感じる。夜中に寝汗で目が覚める。このようなほてりや発汗は「血管運動症状」と呼ばれ、更年期にみられる代表的な変化です。
卵巣機能の変化に伴い、女性ホルモンの分泌が揺らぐことで、体温を調節する仕組みが不安定になると考えられています。ただし、感じ方は人によって大きく異なります。ほとんど気にならない方もいれば、仕事や睡眠、外出をためらうほどつらい方もいます。
ほてりは本人の気の持ちようではありません。また「更年期だから全部同じ」と決めつけるのも適切ではありません。動悸、甲状腺の病気、薬の影響など、似た症状を起こす別の要因が隠れることもあります。
研究では運動の効果をどう評価した?
主役にした論文は、Liuらによる「Effects of exercise on vasomotor symptoms in menopausal women: a systematic review and meta-analysis」です。ウォーキングや有酸素運動など、計画された運動を調べた21件のランダム化比較試験、合計2,884人をまとめています。
無治療のグループと比べると、運動をしたグループでは血管運動症状の重症度が小さく改善しました。10研究を統合した標準化平均差は0.25、95%信頼区間は0.04〜0.47でした。
ただし、ここには大切な注意点があります。重症度に関する根拠の確実性は「非常に低い」と評価され、バイアスの危険が高い研究を除くと統計学的な差は見られませんでした。
「運動すれば治る」とは言えない理由
研究で使われた運動は、種類、強さ、時間、実施期間が同じではありません。参加者の年齢、閉経からの期間、症状の強さ、服薬状況も異なります。さらに、ほてりの回数やつらさは本人の記録に基づく研究が多く、期待や生活環境の影響を完全には除けません。
つまり、今回の結果は「運動でほてりが治る」と証明したものではなく、つらさが軽くなる人もいるかもしれないが、誰にどの運動が最適かはまだ分からないという段階です。関連がみられたことと、運動が直接の原因となって症状を改善したと断定することは分けて考えます。
それでも身体を動かす意味
運動の価値は、ほてりの回数だけでは決まりません。NICEの更年期ガイドラインは、身体活動によって筋肉量と筋力を保つ重要性を説明するよう勧めています。更年期以降は、骨、筋肉、心血管の健康も長期的に考えたい時期です。
また、軽く身体を動かすことで気分転換になり、活動量低下による体力の落ち込みを防ぎやすくなる方もいます。だからこそ「ほてりを消すためのノルマ」ではなく、これからの身体を守る生活習慣として位置づけるのがおすすめです。
始めるなら「涼しく、短く、調整できる」環境で
運動の種類に唯一の正解はありません。歩く、自転車をこぐ、水中で動く、軽い筋力運動などから、生活に組み込みやすいものを選びます。運動習慣がない方、持病や関節の痛みがある方は、最初から一般的な目標量を満たそうとせず、主治医や専門職と相談しながら調整してください。大切なのは、症状が出た日の自分を責めず、休む日も含めて長く続けられる形を探すことです。
1.体調のよい時間を選ぶ
暑い時間帯や寝不足の日に無理をせず、朝夕の涼しい時間、室温を調整できる場所を選びます。ほてりの出た時刻、睡眠、飲酒、辛い食事などを簡単に記録すると、自分の傾向を見つけやすくなります。
2.会話できる強さから始める
まずは10分程度の散歩ややさしい体操でも十分です。息を止めず、会話ができるくらいの強さを目安にします。翌日に強い疲れが残る場合は、時間や強さを下げてください。
3.逃げ道を準備する
脱ぎ着しやすい服、飲み物、タオル、扇風機などを用意します。屋外なら途中で休める経路を選び、ほてりや動悸が強くなったら中断します。頑張って耐えることがトレーニング効果を高めるわけではありません。
医療機関へ相談したい目安
ほてりや寝汗で眠れない、仕事や家事に支障が出る、気分の落ち込みが続く場合は、我慢を続けず婦人科やかかりつけ医へ相談してください。NICEは血管運動症状に対してHRTを選択肢として提示し、更年期に特化した認知行動療法も状況に応じて検討するとしています。治療は既往歴や希望に合わせて相談します。
受診前に、症状が始まった時期、1日の回数、睡眠への影響、月経の状況、服用中の薬をメモしておくと相談がスムーズです。HRTを含む治療には適否があるため、自己判断で始めたり中断したりせず、医師と利益・リスクを確認しましょう。
次の場合は、更年期と決めつけず早めの評価が必要です。
- 胸の痛み、強い息苦しさ、失神
- 片側の手足の麻痺、顔のゆがみ、ろれつが回らない
- 安静でも続く強い動悸
- 体重減少、手の震え、発熱などを伴う
- 12か月以上月経がなかった後に出血した
胸痛や神経症状など急な変化は救急要請を優先してください。
よくある質問
汗をかくほど運動した方が効果がありますか?
いいえ。汗の量とほてり改善の効果が比例するとは確認されていません。暑さで症状がつらくなる方もいるため、快適に継続できる強さを優先しましょう。
運動中にほてったら続けてもよいですか?
いったん速度を落とすか中断し、涼しい場所で水分を取ります。胸痛、強い息苦しさ、失神感がある場合は運動を再開せず、緊急の相談を優先してください。
整体だけでほてりは改善できますか?
整体は更年期の血管運動症状を診断・治療するものではありません。当院では、首肩のこわばりや運動時の不安など、身体を動かしにくくする要因を確認し、医療機関の方針を妨げない範囲で活動を支えます。
まとめ
運動は、ほてりのつらさを少し軽くする可能性がありますが、回数を確実に減らすとはいえません。それでも筋力や体力を保つうえで身体活動には大切な意味があります。
「症状を消すために頑張る」より、涼しい環境で短時間から始め、体調に合わせて調整する。生活に支障がある症状は医療機関へ相談する。この両方を大切にしましょう。
参考文献
- Liu T, et al. Effects of exercise on vasomotor symptoms in menopausal women: a systematic review and meta-analysis. Climacteric. 2022;25(6):552-561. PMID: 35904028. DOI: 10.1080/13697137.2022.2097865.
- NICE. Menopause: identification and management (NG23). Updated 2024.
店舗情報
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店舗名
- 女性専門整体院 Life琴似店
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代表
- 菊地 健太(きくち けんた)
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住所
- 〒063-0804
北海道札幌市西区二十四軒4条4丁目13-2
リヴェール琴似1F
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土曜9:00〜17:00 最終受付15:30
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