
執筆・監修:菊地 健太(理学療法士)
先に結論:赤ちゃんの頭は、複数の骨が縫合というつなぎ目で組み合わさっています。前頭骨・頭頂骨・後頭骨・側頭骨・蝶形骨の位置を知ると観察の言葉は増えますが、平らな場所から「どの骨が悪い」と判断はできません。形が気になるときは、上・後ろ・左右から全体を見て、健診や小児科で相談しましょう。
前回は、大泉門・小泉門に加えて左右の前外側泉門と後外側泉門があることを紹介しました。今回は、その泉門や縫合を囲む骨に注目します。
頭の解剖を知る目的は、保護者が病名を当てることではありません。「右後ろが平ら」「額の出方が左右で違う」など、気づきを医療者へ具体的に伝えるためです。
赤ちゃんの頭は、一枚の骨ではありません
生まれたばかりの頭蓋は複数の骨で構成され、骨と骨の間には線維性の縫合があります。前頭骨と頭頂骨の間は冠状縫合、左右の頭頂骨の間は矢状縫合、頭頂骨と後頭骨の間はラムダ縫合です。[1]
縫合や泉門は脳と頭蓋の成長に関わる正常な構造です。「すき間がある=弱い」「早く閉じるほど丈夫」という理解ではありません。閉じ方には幅があり、触った印象だけで判断しません。
医学資料によって「主要な骨」を数える範囲が異なります。顔面骨まで含めるか、頭蓋冠を中心に説明するかで数が変わるため、今回は頭の形を見るときに関わる5種類を紹介します。
1.前のおでこをつくる前頭骨
前頭骨は、おでこ側の形に関わります。乳児期早期には左右の前頭骨の間に前頭縫合(メトピック縫合)があり、その後の成長で変化します。[2]
額の左右差があるとき、前頭骨だけを見て原因を決めることはできません。後頭部の平らさや耳の位置、顔全体の左右差と組み合わせて評価されます。
「おでこが出ているから押して戻す」ということはしないでください。強い圧迫や自己流の矯正ではなく、写真や経過を小児科へ共有しましょう。
2.頭の屋根をつくる左右の頭頂骨
頭頂骨は左右一対で、頭の上から側面の広い範囲をつくります。左右の間が矢状縫合、前頭骨との境が冠状縫合、後頭骨との境がラムダ縫合です。[1]
上から見た横幅や前後の長さを観察するときに重要な場所ですが、頭頂骨そのものが「ずれた」と家庭で判断することはできません。
次回以降は、矢状縫合と長い頭の形、冠状縫合と前頭部の左右差を別々に扱います。今回の段階では、骨の名前と境界を地図のように知るだけで十分です。
3.後頭部をつくる後頭骨
後頭骨は頭の後ろ側と頭蓋底の一部をつくります。左右の頭頂骨とはラムダ縫合で接します。[3]
寝ている時間が長い赤ちゃんでは後頭部の形が気になりやすい一方、後頭部が平らという見た目だけで、位置的な変形か縫合の問題かを区別することはできません。
片側の後頭部が平らに見える場合は、いつも向く方向、首の動き、額や耳の左右差も医療者が確認する情報になります。寝具で頭を固定する対応は、窒息リスクとの兼ね合いがあるため避けます。[4]
4.耳の周囲にある側頭骨
側頭骨は左右にあり、耳の周囲から頭蓋底の一部を構成します。頭頂骨とは鱗状縫合で接します。[3]
側頭部には、前回紹介した前外側泉門と後外側泉門が関係します。表面から骨の境界を正確になぞることは難しく、耳の高さだけで病名を決めることもできません。
耳の位置の左右差は、頭の形を全体として評価するときの一情報です。成長写真を同じ角度で残すと、診察で経過を共有しやすくなります。
5.側頭部の奥にある蝶形骨
蝶形骨は頭蓋底の中央付近にある複雑な骨で、その一部は前頭骨・頭頂骨・側頭骨と接します。前外側泉門は、これら4種類の骨が近接する場所です。[2][3]
外から「蝶形骨の位置」を見分けたり、押して整えたりすることはできません。左右差の説明に蝶形骨という言葉が使われても、それだけで原因や治療法が決まるわけではありません。
専門用語が増えるほど、それらしく聞こえることがあります。大切なのは、用語ではなく診察に基づく評価です。
頭の骨と「斜頭・短頭・長頭」の関係
斜頭は左右の非対称、短頭は前後径に対して横幅が広い形、長頭は前後に長い形を表す言葉です。これらは形の説明であり、単独で原因を示す言葉ではありません。
位置的な頭の変形は外からの圧が関係することがあります。一方、頭蓋縫合早期癒合症では、特定の縫合が早期に癒合し、異なる方向へ成長することで特徴的な形になります。[4]
つまり「この骨が平らだから斜頭」「頭が長いから矢状縫合早期癒合」と家庭で結びつけることはできません。成長経過と診察が必要です。
研究では、向きの工夫をどう評価している?
CNSの系統的レビュー『The Role of Repositioning』は、位置的斜頭・短頭に対する体位変換教育を調べ、ランダム化試験3件、前向きコホート1件、後ろ向きコホート6件を含めました。[5]
体位変換教育で一定の改善がみられましたが、理学療法の方が有利だった研究もあり、ヘルメットとの比較も一様ではありません。対象や重症度、方法が異なるため、「全員に同じ方法で治る」という結果ではありません。
また、睡眠時の位置固定具や柔らかい枕は勧められていません。研究で形への効果が示唆されても、安全な睡眠の原則が優先されます。[5]
家庭で見るなら、押さずに記録する
上から全体を見る
起きていて機嫌がよく、大人がそばにいるときに、頭の輪郭・額・耳の見え方を観察します。無理に頭を固定しません。
後ろと左右も見る
一方向だけの写真で結論を出さず、同じ明るさと距離で複数方向から残します。髪の流れや撮影角度でも印象は変わります。
首の動きも伝える
いつも同じ方向を向く、反対側へ向きにくい、タミータイムで気になる様子がある場合は、形と一緒に相談しましょう。
小児科・専門外来へ相談したい目安
次のようなときは、家庭だけで判断せず小児科へ相談してください。
- 頭の形の左右差や平らさが強くなる
- 額・顔・耳の位置にも左右差が気になる
- 頭囲の増え方を健診で指摘された
- 縫合に沿った硬い盛り上がりや、特徴的な形が気になる
- 首が一方向へ向きにくい、発達面でも心配がある
頭蓋縫合早期癒合症は、位置的な変形とは対応が異なり、早めの専門評価が重要です。[4] 頭の形だけで緊急性を決めず、普段と違う意識、繰り返す嘔吐、けいれんなど急な体調変化があれば救急相談を優先してください。
よくある質問
平らな場所を触ると、どの骨か分かる?
おおよその場所は分かっても、原因となる骨や縫合は触っただけでは判断できません。強く押さず、形と経過を医療者へ伝えてください。
頭の骨は手で動かせる?
家庭で骨を動かそうとすることは勧めません。赤ちゃんの頭は成長中ですが、それは手で矯正してよいという意味ではありません。
写真だけで診断できますか?
写真は経過共有に役立ちますが、診断の代わりにはなりません。頭囲、縫合、首や全身の状態も含めて評価します。
まとめ:骨の名前は「観察の地図」
前頭骨・頭頂骨・後頭骨・側頭骨・蝶形骨は、縫合を介して頭の形をつくります。ただし、骨の名前を知ることと原因を診断することは別です。
押して確かめるより、全体の形と変化、首の動きを記録し、健診や小児科で相談しましょう。次回は、左右の頭頂骨の間にある矢状縫合と、長頭・舟状頭を整理します。
参考文献
- MedlinePlus. Cranial sutures.
- Lipsett BJ, et al. Anatomy, Head and Neck: Fontanelles. StatPearls. 2023. PMID:31194354.
- AANS. Craniosynostosis and Craniofacial Disorders.
- Dias MS, et al. Identifying the Misshapen Head: Craniosynostosis and Related Disorders. Pediatrics. 2020;146:e2020015511. DOI:10.1542/peds.2020-015511.
- Klimo P Jr, et al. CNS Systematic Review: The Role of Repositioning. Neurosurgery. 2016;79:E627–E629. PMID:27776087. DOI:10.1227/NEU.0000000000001428.
本記事は一般的な情報提供で、個別の診断・治療ではありません。資料確認日:2026年9月5日。
店舗情報
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店舗名
- 女性専門整体院 Life琴似店
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住所
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この記事の執筆・監修菊地 健太